◆スーパーミッドALスリム、ボディの特徴

 このシステムは胴体は圧延のアルミで作られています。何故アルミかと申し ますと、まず「音速が早い」からです、楽器などは木を使ったものが多いのです が楓、松などの厳選した素材等を使用しております。その点スピーカーの箱はベ ニア合板やチップボード、などを使用しており、木の材質はとても楽器用のもの と較べると比較になりませんし、また木の特性は木目と深く関係しています。合 板の様に薄く剥いだ板を交互に接着材で張り合わせたものでは同じ木と言っても 全く別物と言えます。木と音速の関係は下図にありますように木目方向にはかな りの音速をもっていますが、直角方向の音速は1/4から1/2に減ってしまいま す、ですから剥いだ板同しが互いに振動を打ち消し合ってしまい良い響きにはな りません、また音速が遅いことは振動(定在波)がいつまでもバッフルに残り、 残った振動が次のスピーカーの振動板の動きを邪魔するからです、当店の実験で もスピーカーボックスや台からの振動が特にツィターの音質を著しく劣化させる のを体験しています。
 当店の考へ方は振動を熱エネルギーに変えてしまうことはよくないと考えて おります。出来るだけ振動を空気中に放出させるのが良く、ただし材質があまり 固有振動を出してはしてはいけないと考へております。
 また楽器とスピーカーは同じ要素を持っています。それは空気中に音を放出 することですが一番の違いは、楽器はそれぞれの楽器固有の音をだせばよいので すがスピーカーは色々の楽器の音や色々の人の声などを同時に再生しなくてはな らないことです、その為には過渡特性やダイナミックレンジを出来るだけ大きく かつバランスよく追求していかなければなりません、LPレコード時代の線速度の 遅いあまり過渡特性のよくない時代は反応の鈍い大型ウーファーと合板で済みま したがデジタル信号の変化の激しさには今までのやり方、考え方を根底から変え る必要があります。


木と音速の関係
◆スーパーミッドALスリム、ユニットの特徴

SWM1047(フルレンジユニット)
 SWM1047の特徴は8cm径フルレンジユニットですが、エッジレスですので振動 板面積は10cm径と同じです、またロングボイスコイルですので振幅は普通のユニ ットの4倍あります。直系が2倍になれば面積は4倍ですので20cmユニットと同等 の低音がだせる訳です、振動系質量は5,4gと軽いですから過渡特性が良くまた口 径が小さいので分割振動周波数が高く高域特性が優れています。 このユニットはエッジレスですのでエッジから受ける悪い影響がありませんエッ ジは必要悪的要素がありましたがその影響がない為に歪み感の少ない音です。 エッジレスにする為にダンパーはwダンパーになっていますがそのことが振動板 の引きを早くし過渡特性の良さにも一役かっていると思います最大入力は120W あり耐入力も十分にあります。まとめますと、このユニットはワイドレンジ、高い ダイナミックレンジ、高いレスポンス、低歪みと相反する特性をもった最高のユ ニットであると当店は確信しております。
当店はこのユニットを直並列に4本使用していますが、主に理由は三つです、一 つ目は能率が84dBと低いので能率を高めるため、二つ目は耐入力を大きくするた め、三つ目は口径が小さいので振幅が大きくなってしまい(混変調歪み)が増え てしまうので振幅を減らすためです、口径が小さいので高域は伸びますが4倍の ストロークをとれる関係で低音では大きな振幅になってしまいます。しかしハイ カット用のコイルなどを省き(高調波歪み)を減らせる要因にもなっています。



◆SPS-2006(ソフトドームツィーター)

SPS2006の最大の特徴はなんといってもネオジウムマグネットを採用しているこ とです,
そのために強力な磁気回路をもち同型のアル二コ型と比較試聴しますと明らかに 高域の伸びやしなやかさが感じられます。振動系は非常に軽く0,2g程度しかあり ません、アルテック1インチドライバーの振動系0,7gと比較しましてもいかに軽 いかお分かりになると思います。能率は88dBと低いですが最大入力120W、40W RMSと耐入力も大きく実用に十分です。
軽い振動系と強い磁気回路からくり出される鋭い過渡特性と高域の伸びは見た目 や価格とは反対に高い性能を有しています

過渡歪み:入力量の振幅や周波数が急激に変化したために生ずる歪み
高調波歪み:入力量が一つの正弦波であるとき、出力量に高調波成分が発生する
非直線歪み
混変調歪み:入力量が二つ以上の正弦波であるとき、出力量にそれらの結合され た周波数成分が発生する非直線歪み

◆スーパーミッド スペシャル

 当店はスーパーミッド スリムを通してほぼスピーカーの有るべき姿を具体 化できたと考えておりますがそこには若干の妥協とやり尽くせない部分がありま した。
 妥協した部分はアルミに圧延材を使用したことです、素材として圧延材と砂 型アルミを比較しますと、

1)硬度が全く違う

 砂型アルミは硬くて叩いた時に振動の収斂が速く共振が少ない事が解かりま す、共振が減ればより正確な音が再生可能になります。また砂型はアルミが型の 中でゆっくり冷えるので内部に歪みが少ないのも特徴です、金属内の歪みは音の 歪みにも直結します。解かり易い例を上げますとドライバーの振動板です、主に 振動板は平らなアルミ板をプレスして成型しますがそのときに金属内に歪みが発 生します。そのまま使用しますと問題が発生しますので焼鈍し歪みを取り除きま す、圧延材はローラーで引く過程でどうしても大量の歪みが発生しており音質上 も砂型アルミと較べると超えられない部分を感じます。当店の体験上も砂型アル ミを使用したスピーカーは演奏者の息吹きや楽器の音に温もりを感じられ他の素 材では得られない質感があります。音楽は正に人間が演奏しているのだという実 体感があります。くどいようですが砂型アルミエンクロージャーから発する音色 は非常に素直で温もりがあり、この質感は砂型アルミだけが持っている大きな特 徴であり他のものにはありません。

2)一体成型が可能

 アルミ圧延材を使用すれば切ったりネジ止めを必要とします。そのために本 当に固定されている所は、点接点となり機械的強度としては充分でも対振動強度 はモノ足りません、対振動強度はいくらあってもこれで良いということは無いと いうのが当店の考えです、砂型を使用すれば一体成型が可能になり接合の問題か ら逃げることができます。スペシャルは天板から底板まで全部一体とし取り外し ができる所は後のスピーカーを取り付ける部分のみです。

3)形状の自由度が大きい

 初めに書きましたやり尽くせない部分に関係するのですが、圧延材では曲線 や複雑な形状はコストの関係や歪みの関係で難しかったのですが、砂型にするこ とにより簡単に自由な形状を歪みや無理なく作ることが可能になります。スーパ ーミッド スリムを作るときホーンを組み合わせたかったのですが先程の理由で 断念した経緯があります。音楽信号の所で述べましたが低音は非常に振動板の振 幅が大きくなり実際のダイナミックレンジを得ることが困難です、そこでホーン を付加し能率を上げて負担を減らす方法を取りたかった訳です、通常ホーンは中 高音に使用します。本当は低音こそホーンにするべきなのですが大きさの関係で 殆ど使用不可となっていました、音楽信号の再生に於いて一番重要なのは中域で すが一番困難なのは低域です、より詳しく言えば低域の基音を如何にきちんと再 生できるか、言い換えれば(全帯域を如何にパルシブにダイナミックに再生する か)がオーディオの醍醐味だと当店は考えております。そのためにはどうしても ホーンの力を借りたかった訳です。

 ホーンの形状は大きく分けてエキスポーネンシャルとコニカルに分かれます。 2つのホーンの特徴を述べますと、

ア)エキスポーネンシャル ホーン

カットオフ付近に大きなインピーダンスのあばれがありカットオフ以下はス トンと落ちてしまう、しかしカットオフ以上においては特性が良い。

イ)コニカル ホーン

カットオフ付近にインピーダンスのあばれが少なくカットオフ以下までダラ 下がり特性、しかし再生帯域における特性はエキスポーネンシャル ホーンより 劣る。


 スーパーミッド に採用するホーン形式は小型化する必要上コニカル ホーン とし、形状はCWストレート ホーン(CWはコンスタント ワイドの略)としま した、スーパーミッド スペシャルはカットオフ周波数の異なるCWストレート ホーンを上下2つ有し補い合う構造になっています。
 通常のSPシステムとは反対の中高音はダイレクトラジエター、低音はバッ クロード型とは異なり理想形のストレート 砂型アルミ一体構造と当店の考える 理想をほぼ満たしたものが完成しました、音質は他の追従を許さない高次元のも のに仕上がったと自負しております。

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